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涼しくなりましたね。
今日なんかは半袖で過ごすにはちょっと寒かったです。

ええと、カカ誕と尻に敷かれるカカシ妄想が高じたんだけど、なぜかシカマルの誕生日話のようなそうでもないようなよくわからない話になってしまったので、もうこっちでアップします。

シカマル視点です。無題!(いばるな)

本気でわけがわからん自分!

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「カカシ先生。ここはもう少し様子を見ましょう」
 その日の俺はいつも以上に慎重になりすぎていたのかもしれない。
 過日の任務で、自分の読みがわずかにではあるが外れたことが尾を引いていたのか。
「んー。いいんじゃないここは突っ込んでも」
 呑気な口調はいつものこの人のそれだ。
 奇しくも再び同じ任務に就くことになった上忍は経験も実力も俺の遥か上をいくくせに、
――今回もシカマルに任せるよ。
 余裕たっぷりにそう言った。俺達の意を汲んで、弔い合戦の引率を買って出てくれた歴戦の上忍は、けれども今の俺の逡巡を容易く見破ったらしい。
 確かに、辺りに身を潜めた敵の気配から判断しても、この人の言うことに間違いはない。
 否と言えばこの人はそれを尊重してくれるだろうけれど、
「やっぱそうっすよね」
「んじゃ一気に片付けるよ」
 呑気そうな口調とは裏腹に、鋭く光る半眼の隻眼とゆらりと立ち上る殺気に俺の背筋は怖気を覚えた。
 まだまだひよっこの俺が及びもつかない忍びとしての力をこの人は持っている。
『カカシ先生? あーもーちょろいちょろい』
『ただのおっさんよ』
 本心じゃないことくらいわかっちゃいるが、ナルトもサクラもカカシ先生に容赦がない。
 唯一サイだけが、得体がしれない、と青白い頬を僅かに強張らせる。
 どちらかと言えば俺はサイに同感だった。
 過ごしてきた時間、積み重ねられた経験と信頼があってこそ、ナルトやサクラの様な口が聞けるんだろう。
 だから、形ばかりの気の抜けた口調が、返って俺の畏れを大きくさせる。理屈ではなく本能が感じ取るそれはアスマが持っていたものとは何かが違う。どんな戦況にあっても本来の鷹揚さを失うことのなかった俺の師とは。
 ……なんの感傷だっての。
 時折襲いくるそれにもう慣れっこになってはいる。
 アスマの存在は俺の中で唯一絶対。それは俺がわかっていればそれでいい。
『アイツは難しい奴だからな』
 そういえば、いつかアスマが、この人のことを指してそう言ってた。
 アスマにしてもカカシ先生にしても、俺達とは生きてきた時代が違う。それはわかってる。それとは異質の何かがこの人の向こうに垣間見える気はする。けれど、俺はあの言葉の意味をわかったようでわからないでいる。
「シカマル。しっかり頼むよ」
「りょーかい」
 俺の影がターゲットに伸びるのを見遣りながら、青白いチャクラを漲らせたカカシ先生は一息に地面を蹴った。



「さすが仕事が早いっすね」
「ん。ちょっと野暮用」
 さっさと仕事を終わらせたカカシ先生の背中は、すっかりいつものそれに戻っている。
 ……いや、違うな。
 さらりと吐かれた言葉に、俺の思考は釘付けになっていた。
 野暮用なんて言葉を使う理由はたいてい決まっている。
 そう。嘘みたいなほんとの話。この人の恋人が、俺達のよく知る先生だってことが。ただし周りには内緒にしているらしい。ばれていないと思っているのは本人達ばかりなり、なのか、わかっていて放置しているのか。
 この人に限って言えば後者っぽいなとは思うが。
「んじゃお疲れ」
 阿吽の門を潜って早々に、報告の類を俺に押し付けて、カカシ先生は家路に就こうとする。
「もしかして、急いでました?」
「ま、ちょっとね。早く帰ってきて欲しそうだったから」
 俺はうっかり赤面しそうになった。
 ……わざとばらしてんじゃねーか。
 臆面もなくその『存在』を口に出す歴戦の上忍の姿に、どうしてナルトたちがああなのかは少し分かった気がする。
「もしかしなくても、怒ると恐い……とか?」
「んー、今回はそれはなさそうだけど、怒った時は恐いよ」
 言ったカカシ先生の纏う空気に俺は、盛大な違和感を覚えていた。
 とりあえず、
 でしょうね。俺もよく怒られましたから。
 という呟きは口に出さないでおいた。
 それにしても、この掴み所のない上忍があの純情堅物先生――俺は内心で勝手にそう呼んでいた――と本気で付き合ってるのか。
 ってことは当然……。
 親兄弟でもない、友人でもないらしい大人が二人、身を寄せ合ってやることが多分あるんだろう。
 うっかり妙なところに想像の羽を伸ばしてしまった俺は、慌ててそれを仕舞いにかかる。
 男同士のそれを想像するのが気持ちわりぃとか、そういうんじゃなくて、まだ餓鬼の俺が踏み込んじゃいけない域なんだろう、こういうことは。
 あの明朗快活な先生が、とか……
「なーに考えてんの。シカマルくん」
「えっ……いやっ」
 うろたえる俺に、カカシ先生が口布の中でニヤリと笑ったのがわかる。
「ま、人の詮索に頭を巡らせるのもいいけどね、君にも頭空っぽに出来る日が来るよきっと」
 無駄に近い距離で囁かれた声。全てを見透かされたような居心地の悪さと、例のこの人に対する得体の知れなさのようなものが入り混じって、また俺の背筋を怖気が走った。
 自分でばらしたくせによ。
 ちょっと文句を言いたい気分でもある。
「じゃ、後よろしくー」
 ひらひらと右手を降って踵を返したカカシ先生の背中を眺めて俺は首を傾げた。あの背中を俺はよく知っている。
 さっきの違和感の正体は至極簡単。
 あれは、かーちゃんに怒られちまう、と嬉しげに家路に就く親父の背中と同じだ。
『女がいなきゃ男はダメになっちまうもんなんだよ』
 親父の言葉が頭を掠めて、俺はわからなくなった。
 男だろうが女だろうが、関係ねーのか。
 別に俺は、誰が誰と付き合おうが、それが異性だろうが同性だろうが、好きになっちまったら何でもいいと思ってはいる。 けど、いつかの親父のあの言葉が骨身に沁みていて、同性愛なんてものはいまいちピンときてないのも事実だ。未だに、女がいねーとなんでダメになるのかわかんねー、いたってダメなヤツはダメだとか、下らないことばかり考えてる俺にとっては、ただの面倒くせー存在でしかない女の重要性なんてほんとはわかっちゃいないが。
 そこまで考えて、長い黒髪の女性(ひと)の後ろ姿が脳裏を過ぎる。
 アスマが守りたかった大切な者達。
 苦く笑いながら、ぼんやりと眺めた視界で遠ざかる銀髪の猫背。
 あの掴み所のない上忍が本気で気を緩める場所。それがあの先生のところなんだろう。後から知った話、実は苦労人でもあるあの先生の懐の深さなら、アカデミー時代まともに授業すら受けていなかった俺にもわかるから。
 ……俺もまだまだっつーことだな。

 乾いた風に背中を押されてアカデミーへと歩き出した俺は、もうすぐ17歳になる――
 
 

 

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